補助金で機器を買う前に、医療機関が整理すべきこと
医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業は、単にICT機器を購入するためだけの制度として捉えるべきではありません。本当に問われるのは、「自院のどの業務を、どのように効率化し、どのデータで効果を確認するのか」という業務効率化計画の中身です。
見守り機器、インカム、スマートフォン、生成AI、記録支援システムなどを導入する前に、現場の課題を整理し、導入目的と効果測定の方法を明確にする必要があります。Voiciaでは、この前段階として、組織課題可視化アンケートを活用し、現場の声を定量的・定性的に分析します。
業務効率化計画は、補助金活用の中心になる資料です
補助金申請では、ICT機器の名称や金額だけでは不十分です。現在の課題、3年間の取組全体像、業務手順の見直し、タスク・シフト/シェア、年度別の効率化目標、業務効率化推進委員会、ランニングコストの確保策、データ測定・提出体制まで整理する必要があります。
業務効率化計画は、補助対象病院の選定において重要な資料になります。ただし、計画を作成すれば採択されるというものではありません。対象要件、提出方法、審査・選定、補助対象経費は自治体や公式資料で確認する必要があります。
現在の課題
3年間の取組全体像
業務手順の見直し
タスク・シフト/シェア
年度別の効率化目標
業務効率化推進委員会
ランニングコストの確保策
データ測定・提出体制
現場課題を数値化してから、業務効率化計画を作成する
業務効率化計画では、「忙しい」「人が足りない」といった感覚的な課題だけではなく、どの業務に、どの職種が、どの時間帯で、どの程度負担を感じているのかを具体的に整理することが重要です。
Voiciaでは、医療機関向けに組織課題可視化アンケートを実施し、職員の声を定量的・定性的に分析します。アンケート結果をもとに、記録業務、夜勤帯巡視、ナースコール対応、職員間連絡、委員会・会議、申し送り、ICT活用状況、心理的負担、離職リスクなどを可視化し、業務効率化計画に記載する「現在の課題」「導入目的」「定量目標」「効果測定項目」へつなげます。

組織課題可視化アンケートで整理する項目例
- 記録業務にかかる負担
- 夜勤帯巡視・訪室にかかる負担
- ナースコール対応の負担
- 職員間連絡・情報共有の課題
- 委員会・会議・議事録作成の負担
- 申し送り・多職種連携の課題
- ICT機器・システム活用への不安
- 超過勤務につながっている業務
- 医療安全・インシデントに関する課題
- 職員の心理的負担・疲労感
- 離職リスクにつながる要因
- 改善してほしい業務・優先度

数値は例示です。実際には各医療機関のアンケート結果に基づいて分析します。
アウトプット例
- 組織課題可視化レポート
- 課題別スコア一覧
- 部門別・職種別の課題傾向
- 改善優先度ランキング
- 自由記述のAI要約
- 業務効率化計画に反映すべき重点課題
- 導入すべきICT機器・システムの方向性
- 効果測定すべきKPI案
- 業務効率化推進委員会で検討すべき論点
業務効率化計画の作成方法|整理すべき10項目
業務効率化計画は、病院の現状を整理し、導入するICT機器等と業務改善の関係を説明するための資料です。以下の10項目を順番に整理すると、計画の骨子を作りやすくなります。

- 1
申請者の概要を整理する
病床機能、対象病棟、職員体制、診療報酬請求実績、ベースアップ評価料など、募集要項で確認される基本情報を整理します。
- 2
対象部門・対象業務を明確にする
病院全体ではなく、看護部門、外来、薬剤、検査、リハビリ、事務部門など、どこから取り組むかを明確にします。
- 3
導入予定のICT機器・サービスを整理する
見守り機器、カメラ、インカム、スマートフォン、生成AI、音声入力などを、解決したい業務課題と対応づけます。
- 4
申請者要件を確認する
対象医療機関、提出期限、意向調査の回答有無、補助率、対象経費、事業完了時期は都道府県ごとに確認します。
- 5
これまでの取組を整理する
電子カルテ、勤務表見直し、看護補助者配置、委員会運営など、既に行っている勤務環境改善を整理します。
- 6
現在の課題を具体的・定量的に書く
忙しい、人が足りないだけではなく、どの業務に何分かかり、どの職種・時間帯で負担が大きいかを整理します。
- 7
3年間の取組全体像を作る
1年目は導入と研修、2年目は運用改善、3年目は横展開や定着など、年度別に無理のない流れを作ります。
- 8
業務手順の見直しをBefore / Afterで書く
ICT機器を入れるだけでなく、通知、応援要請、記録、申し送り、巡視の判断基準などの運用を整理します。
- 9
タスク・シフト/シェアを整理する
看護師が担うべき判断や処置に集中できるよう、看護補助者、事務職、多職種と分担できる業務を整理します。
- 10
定量目標・測定方法・ランニングコストを整理する
超過勤務、記録時間、巡視時間、ナースコール対応、インシデント、職員アンケートなど、測定方法と継続費用を明記します。
業務効率化計画の記載例
スマートホスピタル化・看護業務効率化を想定した記載イメージ
以下は、見守り機器、見守りカメラ、インカム、スマートフォン、生成AI・音声入力等の記録支援を組み合わせ、看護部門を中心に業務効率化を進める場合の記載例です。実際の計画作成時には、自院の病床機能、職員体制、現場課題、導入機器、導入前データに基づいて内容を調整する必要があります。
5-1. これまで実施してきた業務効率化・勤務環境改善に関する取組例
記載のポイント
既存の改善努力を否定せず、残っている課題を次の取組につなげます。
記載例
電子カルテの導入、看護補助者の配置、勤務表の見直し、ノー残業デーの推進など、これまでにも勤務環境改善に取り組んできた。一方で、記録業務、ナースコール対応、夜間の巡視業務、職員間連絡には依然として負担が残っており、抜本的な業務量削減には至っていない。特に、看護職員の記録作業と夜勤帯の巡視・訪室対応が、超過勤務や身体的・心理的負担の要因となっている。
5-2. 現在の課題
記載のポイント
人材不足や物価高騰などの経営環境と、現場業務の負担を分けて整理します。
記載例
物価高騰、人材不足、看護職員の確保難により、病院運営の継続性に影響が出ている。現状では、ナースコール対応、ナースステーションでの記録作業、夜間帯の定時巡視、職員間連絡に時間を要しており、恒常的な超過勤務が発生している。また、夜間帯の巡視は職員の大きな負担となっている一方で、巡視の合間に発生する転倒・転落インシデントを完全に防ぐことは難しい。人材獲得競争が激化する中で、職員の負担軽減、医療安全、職場環境改善を一体的に進める必要がある。
5-3. 本事業で取り組む内容・3年間の計画の全体像
記載のポイント
導入機器だけでなく、運用マニュアル、職員研修、効果測定、横展開まで含めて書きます。
記載例
本事業では、看護部門を中心に、ICT機器等を活用した業務効率化と職場環境改善に取り組む。具体的には、見守りカメラ・センサー、音声入力・自動サマリー生成AI等の記録支援システム、インカム機能付きスマートフォン等を組み合わせて導入し、夜勤帯の巡視、ナースコール対応、記録業務、職員間連絡の効率化を図る。1年目は、対象病棟におけるICT機器導入、運用マニュアル作成、職員研修、導入前後のデータ測定を行う。2年目は、1年目の効果測定を踏まえ、運用ルールの見直し、通知設定の最適化、業務手順の定着を進める。3年目は、導入病棟での成果を検証し、他病棟への展開や継続的な職場環境改善につなげる。なお、要件を満たす場合には、ICT等の活用による看護業務効率化や看護配置基準の柔軟化についても、関係する公式情報を確認しながら検討する。
5-4. 業務手順の見直し
記載のポイント
定時巡視の廃止とは断定せず、患者状態やアラートに応じた確認の優先順位を検討する表現にします。
記載例
見直し前は、夜勤帯に全患者へ一律の定時巡視を実施し、ナースコールはナースステーションの親機で受け、看護記録は業務の合間や終業前にまとめて入力している。見直し後は、見守りセンサーやカメラによるモニタリングを活用し、患者の状態やアラート内容に応じて確認の優先順位を判断する運用へ見直す。ナースコールやアラートは担当者のスマートフォンやインカムに通知し、必要時に迅速に応援要請できる体制を整える。看護記録については、ベッドサイドでの音声入力やモバイル端末入力を活用し、記録作業の後回しやナースステーションへの往復を減らす。
5-5. タスク・シフト/シェアの内容
記載のポイント
職種ごとの役割を曖昧にせず、看護師が集中すべき業務と分担可能な業務を整理します。
記載例
インカムやスマートフォンを活用し、看護師、看護補助者、事務職、リハビリ職、薬剤師等の間で、リアルタイムに情報共有できる体制を整える。看護師が対応すべき医療判断や処置に集中できるよう、環境調整、物品補充、搬送補助、患者状態の一次確認など、看護補助者や関係職種と分担可能な業務を整理する。また、生成AIや音声入力を活用し、看護記録、サマリー作成、申し送りメモ、委員会資料作成などの文書作成業務の一部を支援し、職員の事務負担軽減を図る。
5-6. 年度別の具体的な取組内容
記載のポイント
導入初年度だけで終わらせず、2年目以降の運用改善と定着までを書きます。
記載例
1年目は、対象病棟にWi-Fi環境を整備し、見守り機器、スマートフォン、インカム、記録支援システム、生成AI活用ツール等を導入する。業務効率化推進委員会を中心に、アラート対応、ベッドサイド記録、職員間連絡、夜勤帯巡視の運用ルールを整理し、職員研修を実施する。2年目は、1年目の導入効果を確認し、超過勤務時間、記録業務時間、夜勤帯巡視時間、インシデント件数等をもとに運用を見直す。3年目は、対象病棟での成果を整理し、他病棟への展開可能性を検討する。
5-7. 年度別の効率化目標・定量目標
記載のポイント
数値は例示として扱い、実際には自院データに基づいて設定します。
記載例
必須目標として、A病棟の常勤看護職員の月平均超過勤務時間を導入前と比較して10%削減する、または月平均10時間以下を目指す。あわせて、看護記録、看護サマリー作成、申し送り準備等に要する時間を25%削減することを目標とする。任意目標として、A病棟における転倒・転落インシデント件数を20%削減することを目標とする。数値は記載例であり、実際の目標値は各病院の現状データ、導入機器、職員体制、病棟特性に基づいて設定する。
5-8. 実施体制・運用
記載のポイント
経営層と現場が同じデータを見て、評価と見直しを継続できる体制を明記します。
記載例
院長または副院長を委員長とし、看護部長、事務長、病棟師長、医療安全管理者、情報システム担当者、薬剤・リハビリ部門、総務・経理担当者を含む業務効率化推進委員会を設置する。委員会は月1回程度開催し、超過勤務時間、記録業務時間、夜勤帯巡視時間、ナースコール対応時間、インシデント件数、職員アンケート結果などを確認する。既存の委員会を活用する場合も、業務効率化と職場環境改善について経営層と現場が進捗を共有し、評価と見直しを行う体制を明確にする。
5-9. その他・ランニングコストの確保策・データ提出体制
記載のポイント
クラウド利用料、保守費、通信費など、導入後の継続費用を補助対象外の可能性も含めて整理します。
記載例
クラウド利用料、保守費、通信費、アカウント利用料などのランニングコストは、補助対象外となる場合があるため、導入後も継続できる財源確保策を明記する。本取組により、超過勤務時間の削減、派遣職員依存の軽減、採用・教育コストの抑制、業務平準化による効率化が見込まれる場合には、その効果を試算し、病院運営費の中で継続的に確保する方針を示す。ただし、削減効果は病院の規模、職員体制、導入機器、運用状況によって異なるため、自院のデータに基づく個別試算が必要である。データ提出体制は、事務長を責任者とし、人事部門、医療安全管理室、看護部、情報システム担当が連携して測定・集計する。
業務手順のBefore / After

夜勤帯巡視
Before
全患者に対して一律の定時巡視を実施し、状態変化の把握は訪室後になることがあります。
After
見守りセンサーやカメラの情報を参考に、患者状態やアラート内容に応じて確認の優先順位を判断する運用を検討します。
ナースコール対応
Before
ナースステーションの親機で受け、担当者を探して伝達する流れになりがちです。
After
スマートフォンやインカムへ通知し、必要時に応援要請や多職種連携をしやすい体制を整えます。
看護記録
Before
業務の合間や終業前に、ナースステーションのPCでまとめて入力することがあります。
After
ベッドサイドでの音声入力やモバイル入力を活用し、後回しや往復移動の削減を目指します。
定量目標の表
| 区分 | 目標例 | 測定方法 |
|---|---|---|
| 必須目標1 | A病棟の常勤看護職員の月平均超過勤務時間を、導入前と比較して10%削減する、または月平均10時間以下を目指す。 | 勤怠データを用いて、導入前後の月平均超過勤務時間を比較します。 |
| 必須目標2 | 看護記録、看護サマリー作成、申し送り準備等に要する時間を25%削減することを目標とする。 | 導入前後の連続5日間で、記録・文書作成に要した時間を計測します。 |
| 任意目標 | A病棟における転倒・転落インシデント件数を20%削減することを目標とする。 | 医療安全管理室の報告データを用いて、同一条件で比較します。 |
ランニングコスト確保策の注意点
クラウド利用料、保守費、通信費、アカウント利用料などは、補助対象外となる場合があります。導入後も継続できる財源、更新費用、院内の予算管理、効果測定データの提出体制まで、事前に整理しておくことが重要です。
業務効率化推進委員会は、導入後のPDCAを回す中心になります
ICT機器を導入しても、通知設定、応援要請、記録方法、夜勤帯巡視、研修、効果測定が現場に合わなければ、業務改善につながりにくくなります。業務効率化推進委員会では、経営層、現場責任者、医療安全、情報システム、総務・経理が同じデータを見ながら、導入後のPDCAを回す体制を作ります。
委員会の構成例
- 院長・副院長等の管理者
- 事務長
- 看護部長
- 病棟師長
- 医療安全管理者
- 情報システム担当
- 薬剤・リハビリ部門
- 総務・経理
- 外部支援者
委員会で検討する内容
- 現場課題の整理
- 導入前データの確認
- 導入機器の選定
- 業務手順の見直し
- タスク・シフト/シェア
- 職員研修
- 導入後の効果測定
- インシデント件数の確認
- ランニングコスト確保策
- 3年間のPDCA
Voiciaが支援できること
Voiciaでは、医療機関が補助金を単なる機器購入で終わらせず、現場負担の軽減、職場環境改善、医療安全、経営改善につなげられるよう、計画作成から導入後の定着まで伴走支援します。申請代行ではなく、課題整理・業務効率化計画作成支援・効果測定支援・定着支援を行う位置づけです。
組織課題可視化アンケート
現場課題の洗い出し
職員アンケート設計
課題別スコア分析
自由記述のAI要約
業務効率化推進委員会の立ち上げ支援
業務効率化計画の作成支援
ICT機器・見守り機器・インカム・生成AI活用の方向性整理
費用対効果・投資回収期間の整理
院内説明資料・経営会議資料・理事会資料の作成支援
導入前後の効果測定支援
職員研修・運用マニュアル作成支援
導入後のPDCA支援
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申請前の準備から、業務効率化推進委員会、業務効率化計画、ICT機器・見守り機器・インカム等の導入検討、導入後の効果測定までを図解で整理した資料です。

